会社員として働いていたころは、なんの手続きをせずとも、給与から社会保険料が天引きされていたはず。ですが、フリーランスになったら自分で手続きや支払いをしなければなりません。
そのため、フリーランスになってから、初めて国民健康保険と国民年金に向き合ったという方も多くいると思います。独立後、戸惑わず各社会保険の手続きができるように、フリーランスの国民健康保険と国民年金について解説します。
フリーランスが加入する社会保険とは?
フリーランスが加入する社会保険は2つあります。それが「国民健康保険」と「国民年金」です。
国民健康保険
日本には国民皆保険制度があるため、公的な医療保険に必ず加入しなければなりません。会社員時代に入っていた健康保険を任意継続する方法もありますが、退職後は保険料が全額負担となるうえに、2年間しか任意継続ができません。ですから、フリーランスは一般的に「国民健康保険」に加入すべきです。
ただ、条件によっては任意継続の方がトクをする場合があります。その条件のひとつが「扶養家族が多い場合」です。
会社員時代の健康保険を任意継続する場合、扶養家族も保険対象になるため総合的にはおトクになる可能性が高いです。
もうひとつの条件が「独立後すぐに収入が上がる可能性がある場合」です。
会社員時代の健康保険は、標準報酬月額が28万円として換算されているため、月収が28万円を超える場合はおトクになる可能性が高いです。
ただし、これは一概には断言できかねますので、気になる人は独立前に会社の担当者(労務や総務など)に、会社の健康保険を全額自己負担した場合の金額がいくらかを確認しておきましょう。
国民健康保険 | 任意継続 | |
保険料の計算 | 前年の所得から計算 | 退職時の標準報酬月額から計算 |
加入継続期限 | 特になし | 最大で2年間まで |
加入条件 | 他の医療保険に加入していないこと | 任意継続する保険への加入歴が2ヶ月以上あること |
扶養者の是非 | 不可(扶養者がいる場合は、扶養者分、加入する必要あり) | 可能(本人が加入することで扶養者も加入したことになる) |
手続き期限 | 退職日の翌日から14日以内 | 退職日の翌日から20日以内 |
手続き場所 | 所轄の市区役所 | 協会けんぽ支部または各健康保険組合 |
国民年金
ご存知の方も多いと思いますが、日本の年金制度は「二階建ての制度」です。会社員の場合、厚生年金に加入している印象がありますが、これは国民年金の上に厚生年金に加入しているという状態です。
会社員を辞めフリーランスになると、厚生年金からは外れてしまうので、国民年金のみの加入手続きを行なう必要があります。厚生年金から外れるということは、合計の年金の納入額が少なくなってしまうわけですから、老後に受け取る年金支給額も会社員に比べると少なくなってしまいます。
これはあくまで概算値ですが、仮に国民年金のみに20〜60歳まで加入し納入し続けた場合、老後の受け取り額はおよそ月6.5万円(65歳より / 2019年時点)。一方で、会社員として厚生年金にも加入しているとすると、およそ2倍の月12〜15万円が老後に支給されます。
このように、国民年金だけですと老後に受け取れる支給額は少なくなりますが、年金は支払い続けることで、病気やケガをした時に受け取れる「障害基礎年金」や、万が一亡くなった時に遺族に支払われる「遺族基礎年金」が受け取れるようになるので、継続的に支払いを行なうようにしましょう。
しかし、フリーランス独立後、なかなか収入が見込めないという方も多いはず。そんな保険料の納付が難しい場合は、「納付猶予制度」や「全額免除制度」「一部免除制度」などを利用することも可能です。独立初期に家計のやりくりが厳しい場合は、申請を検討されてみてもよいでしょう。
国民健康保険と国民年金に加入する
ここからは、国民健康保険と国民年金の加入手続きの仕方をご紹介します。
加入手続きに必要な持ち物
【退職したことがわかる書類】
- 社会保険資格喪失証明書(連絡票)
- 離職票
- 退職証明書
- 源泉徴収票
※上記のうちいずれか1点
【個人番号確認書類】
- マイナンバーカード
- 通知カード
- 個人番号が記載された住民票
※上記のうちいずれか1点
【本人確認書類】
- マイナンバーカード
- 顔写真付きの本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
※上記のうちいずれか1点
【その他】
- 印鑑
- 口座の印鑑、通帳(口座振替をする方)
- クレジットカード(クレジットカード引き落としをする方)
- 年金手帳
顔写真付きの本人確認書類が用意できない場合は、2点の提示が必要となります。住民票の写し、年金手帳、公共料金の領収書などを組み合わせ、2種類用意しましょう。扶養家族がいる場合は、それぞれの本人確認書類なども持参します。
加入手続きの仕方
退職した翌日から原則14日以内に手続きをおこないます。お住いの市区町村の役所窓口にて、加入の手続きをしましょう。二度手間になると大変なので、上記記載の持ち物を忘れないように注意してください。
フリーランスは年金受給額に上乗せできる方法も検討しよう
国民年金に加入したからといって、老後の安心が確実に手に入るとは限りません。厚生年金と比べると、年金受給額が少なくなることが理由です。フリーランスが老後、ゆとりを持って暮らすためにも、下記記載の年金額に上乗せできる方法を検討してみてもいいかもしれません。
- 付加年金
- 国民年金基金
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
また、年金とは異なりますが、フリーランスの退職金制度「小規模企業共済」も検討の価値アリです。
確定申告で保険料控除ができる
フリーランスにとって、国民健康保険と国民年金の支払った保険料が全額控除対象となるのはうれしいですよね。社会保険料控除を活用することで、フリーランスが納付するべき税金の負担を減らすことができるのです。
ただし、国民年金保険料を控除するためには、「控除証明書」が必要となります。確定申告まで紛失することのないよう、大切に保管しておきましょう。
加入手続きは早めに。保険料控除で負担を減らそう
この記事では、国民健康保険と国民年金について触れてきました。会社員時代には直接、社会保険について対応することはなかったはずですから、慣れない行政手続きにストレスを感じることもあるかもしれません。
手続きの期限を過ぎたからといって、特に罰則があるわけではありませんが、社会人としての自覚を持つためにも、まずは加入手続きを14日以内に済ませることが大切です。
国民健康保険と国民年金を深く理解したうえで、フリーランスが税金の負担軽減や、老後の安心を確保できる方法についても、これから前向きに考えていきましょう。