Linuxを運用するうえで欠かせないのが「セキュリティ」と「安定性」です。
現代のIT環境では、サイバー攻撃の手法が日々進化し、システムの脆弱性を狙った攻撃が増加しています。
ここではアクセス制御やユーザー管理、SELinux、SSH、ファイアウォールといった要素を整理し、安全なシステム運用に必要な知識をまとめます。
これらの技術を適切に理解し実装することで、堅牢なLinux環境を構築できます。
Linuxの基礎知識
トラブル例(セキュリティ・運用系)

セキュリティ・運用系のトラブルは、アクセス制御の不備、認証エラー、ポリシー設定の誤りなどが中心です。外部からの不正アクセスや内部設定の漏れが原因で、システム全体に影響を及ぼすことも少なくありません。正しいユーザー管理やSELinuxの理解、ファイアウォール設定が不可欠です。
この一覧では、典型的なセキュリティ・運用系のトラブルを整理しました。事象ごとに原因を切り分け、対応記事への入口を確認してください。
| トラブル事象 | 原因の切り分け | 解決記事 |
|---|---|---|
| ユーザーアクセスができない | 権限設定やユーザー無効化 | アクセス制御・ユーザー管理の基本 |
| 過去事例からの脆弱性が再発 | セキュリティ設定不足/未対応 | 過去事例から学ぶ!システムセキュリティの基本 |
| SELinuxが原因で動作しない | ポリシー制御/コンテキスト不整合 | SELinuxの仕組みとトラブル対応 |
| SSHログインが拒否される | 鍵認証設定の誤り/権限ミス | SSHログインの仕組みと公開鍵認証の設定法 |
| ファイアウォールで通信できない | firewalld/iptablesの誤設定 | firewalldとiptablesの違いとアクセス制御の実践 |
アクセス制御・ユーザー管理の基本|アクセス権設定を解説

Linuxのシステム運用では、ユーザー管理とアクセス権限の設定が安全性と安定性を守る基盤となります。
ユーザーやグループに必要な権限だけを割り当てることで、不正操作や情報漏洩を防ぎつつ、効率的な環境を構築できます。
ここでは、ユーザーアカウントの作成・管理からグループ設定、アクセス権限の活用方法までを整理し、システムを強化するための基本をまとめています。
Linux初心者でも実務で活かせるよう、実際の操作例を交えて紹介しています。
ユーザーアクセスができない場合の対策
ユーザー管理の設定不足や権限誤りは、アカウント利用停止や誤操作の原因となります。まずはユーザー情報と権限を確認しましょう。
[原因の切り分け]
| 原因 | 確認方法 | 解決策 |
|---|---|---|
| アカウント無効化 | cat /etc/passwd | grep username で状態を確認 | アカウントが有効か確認し、必要に応じて有効化する |
| 権限不足 | id username で所属グループと権限を確認 | ユーザーの所属グループと権限を見直す |
| パスワード期限切れ | chage -l username で有効期限を確認 | パスワードの有効期限を確認し、期限切れなら再設定する |
| 認証設定の不備(SSH/LDAP など) | /var/log/secure や journalctl で認証エラーを確認 | 認証エラーの場合はログを確認し、SSH設定やLDAP連携を修正する |
| ホームディレクトリの不整合 | ls -ld /home/username で所有者とパーミッションを確認 | ホームディレクトリの所有者やパーミッションを修正する |
| アカウントロック | faillog -u username や pam_tally2 でロック状況を確認 | アカウントロックが発生していれば解除を行う |
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過去事例から学ぶ!システムセキュリティの基本

システムセキュリティは、日常の運用を支える根幹の要素です。過去の大規模インシデントが示すように、基本的な対策を怠るだけで企業や個人は甚大な被害を受ける可能性があります。
脆弱性管理や多要素認証といった基本施策は、被害を未然に防ぐための第一歩です。ここでは、過去の事例を踏まえながら、セキュリティの基礎を整理し、関連する記事から実務に役立つ知識を学べるようまとめています。
過去事例からの脆弱性が再発する場合の対策
以前に発生したセキュリティインシデントと同じ脆弱性が再発することがあります。アップデートや設定変更の不足が主な原因です。
[原因の切り分け]
| 原因 | 確認方法 | 解決策 |
|---|---|---|
| 未適用パッチ | dnf updateinfo list security や yum updateinfo で確認 | セキュリティパッチを常に最新化し、脆弱性を放置しない |
| 設定未反映 | cat /etc/security/* でポリシーや設定内容を確認 | 過去のインシデントを踏まえて設定やポリシーを強化する |
| 古いソフトウェアの利用 | rpm -qa | grep パッケージ名 でバージョンを確認 | ソフトウェアやライブラリのバージョン管理を継続する |
| 脆弱性スキャン未実施 | OpenSCAP / Nessus などのレポートを確認 | 脆弱性スキャンを定期的に実施して潜在的な問題を洗い出す |
| 監査・ログ不足 | /var/log/secure や journalctl で不正アクセスの有無を確認 | ログ監査を徹底し、不審な挙動を早期に検知する |
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SELinuxの仕組みとトラブル対応

Linuxの運用現場で「SELinuxが原因で動かない」と戸惑った経験を持つ人は少なくありません。ファイルのパーミッションや所有者を正しく設定しているのに、なぜかアクセスが拒否される──その裏ではSELinuxによる厳格なポリシー監視が働いています。
SELinuxはLinuxカーネルに組み込まれた強力なセキュリティ機構で、従来のパーミッションやACLに加えて、より細かいアクセス制御を行います。そのため強固な防御を実現する一方で、仕組みを理解していないと「原因不明の不具合」に見えてしまうことも多いのです。
ここではSELinuxの仕組みと、実際にトラブルに直面した際の基本的な対応方法を整理しています。関連する記事を通じて、セキュリティを保ちながら安定したシステム運用を実現するための知識を学んでいきましょう。
SELinuxが原因で動作しない場合の対策
SELinuxの制御は強力ですが、誤ったコンテキスト設定がサービスの停止につながります。
[原因の切り分け]
| 原因 | 確認方法 | 解決策 |
|---|---|---|
| コンテキスト不一致 | ls -Z /対象ディレクトリ でラベルを確認 | 必要に応じてコンテキストを restorecon で修正する |
| ポリシー制御による拒否 | getenforce でモードを確認 | ポリシーモードを確認し、一時的に permissive に切り替えて原因を特定する |
| ログでの拒否検出不足 | /var/log/audit/audit.log を確認し、audit2why で解析 | /var/log/audit/audit.log を確認し、audit2why で拒否理由を解析する |
| ブール値設定の不備 | getsebool -a で有効/無効の設定を確認 | ブール値設定(getsebool / setsebool)を見直す |
| 一時的な無効化に依存 | setenforce 0 のまま恒久対応がされていないか確認 | 恒久的な設定変更が必要な場合はポリシーを適切に追加・修正する |
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SSHログインの仕組みと公開鍵認証の設定法

Linuxサーバーに安全に接続するための基本技術が「SSH」です。日常的に利用される一方で、その仕組みや安全性を十分に理解しないままパスワード接続を続けているケースも少なくありません。
SSHは通信内容を暗号化することで安全なリモートアクセスを実現します。さらに、より強固な方法として「公開鍵認証」が広く利用されており、適切に導入すれば不正アクセスのリスクを大幅に減らすことが可能です。
ここではSSHの基本的な仕組みや認証の流れを整理し、公開鍵認証の設定方法へとつながる知識をまとめています。関連する記事を通じて、安全なログイン環境を構築する手順を学ぶことができます。
SSHログインが拒否される場合の対策
SSHアクセスができないと管理が滞ります。設定誤りや鍵ファイル権限の問題が多い原因です。
[原因の切り分け]
| 原因 | 確認方法 | 解決策 |
|---|---|---|
| 秘密鍵の権限誤り | ls -l ~/.ssh/id_rsa で600になっているか確認 | 秘密鍵の権限を 600 に修正する |
| authorized_keys の権限不備 | ls -l ~/.ssh/authorized_keys を確認 | authorized_keys の権限と配置を確認する |
| sshd設定不備 | cat /etc/ssh/sshd_config を確認 | sshd_config の設定を見直し、sshd を再起動する |
| ファイアウォール制御 | firewall-cmd --list-ports や iptables で22番ポートを確認 | ファイアウォールで 22 番ポートが開放されているか確認する |
| SELinux制約 | /var/log/audit/audit.log を確認 | SELinux の制約がある場合は audit.log を解析し、必要に応じて設定変更する |
| ユーザー無効化/権限不足 | id username や /etc/passwd を確認 | ユーザーが有効化されているか、所属グループを確認する |
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firewalldとiptablesの違いとアクセス制御の実践

Linuxサーバーの運用に欠かせないのがアクセス制御です。その代表的な仕組みとして長年使われてきたiptablesに加え、近年ではfirewalldの利用も広がっています。
両者は同じ「アクセス制御ツール」に見えて、実際にはアプローチや管理方法が異なります。管理のしやすさを優先するのか、細かい制御を重視するのか──選択次第で運用効率やトラブル対応のスピードは大きく変わります。
また「通信が突然遮断された」「設定を変更したのに反映されない」といった現場でよくある問題も、firewalldとiptablesの違いを理解しておくことで原因を切り分けやすくなります。ここから関連する記事を通じて、実践的なアクセス制御の知識を整理していきましょう。
ファイアウォールで通信できない場合の対策
ファイアウォールの誤設定はサービスの停止や通信不良につながります。ルールの確認と再設定が重要です。
[原因の切り分け]
| 原因 | 確認方法 | 解決策 |
|---|---|---|
| firewalld の設定誤り | firewall-cmd --list-all で現在の設定を確認 | firewalld のゾーン設定を見直し、正しいインターフェースに適用する |
| iptables ルールとの衝突 | iptables -L -n でルールを確認 | iptables ルールを整理し、重複や衝突を解消する |
| ポート未開放 | firewall-cmd --list-ports で対象ポートの有無を確認 | 必要なポートを開放する |
| サービス未登録 | firewall-cmd --list-services で対象サービスの登録有無を確認 | 必要なサービスを登録し通信を許可する |
| ゾーンの誤設定 | firewall-cmd --get-active-zones で適用ゾーンを確認 | 適切なゾーンへ割り当てを修正する |
| SELinux による制約 | /var/log/audit/audit.log を確認し、必要なら audit2why で解析 | SELinux が制約している場合は設定を調整する |
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よくあるエラーと解決法
セキュリティ・運用系では、システムを安全かつ安定的に稼働させるために細かな設定や制御が求められます。
そのため、設定ミスや権限不足、証明書の期限切れといった要因によるトラブルが頻発します。
特に SELinux やファイアウォールなどの制御機能は、動作の裏側でアクセスを制限するため、原因が分かりにくく切り分けに時間を要するケースも少なくありません。
また、SSH の接続拒否や sudo 権限の不足は運用担当者の作業を妨げる深刻な問題につながります。
このセクションでは、そうしたセキュリティ・運用系で起こりやすい代表的なエラーと解決の糸口を整理し、効率的なトラブル対応の助けとなる情報をまとめています。
| エラー内容 | 原因 | 解決法 |
|---|---|---|
| SELinux拒否エラー | SELinuxポリシーによるアクセス制御 | ausearch -m avc -ts recent semanage permissive -a httpd_t |
| Firewallルールで通信不可 | firewalldやiptablesの設定誤り | sudo firewall-cmd --list-all sudo firewall-cmd --add-service=http --permanent |
| SSH接続拒否 | sshd設定ミスや鍵ファイル権限誤り | cat /etc/ssh/sshd_config chmod 600 ~/.ssh/id_rsa |
| 証明書エラー(SSL/TLS) | 証明書期限切れ/信頼されていないCA | openssl x509 -in cert.pem -noout -dates sudo dnf install ca-certificates |
| ユーザー権限不足 | sudo設定未登録/グループ未所属 | visudo usermod -aG wheel username |
| ログローテーション失敗 | logrotate設定誤り/権限不足 | cat /etc/logrotate.conf sudo logrotate -f /etc/logrotate.conf |
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