Linuxの運用に欠かせないのが「仮想化」と「バックアップ」です。現代のIT環境では、限られたハードウェアリソースを最大限に活用し、同時にデータの安全性を確保することが求められています。
仮想化技術により、一台の物理サーバー上で複数の仮想環境を構築し、リソースの効率的な利用が可能になります。一方、バックアップは予期しない障害やデータ損失から重要な情報を守る最後の砦となります。
本シリーズでは、これらの技術を体系的に整理し、実践的な運用スキルの習得を目指します。
Linuxの基礎知識 🟠 仮想化・バックアップ
📌 柔軟な環境構築とリスク対策を両立する仮想化とバックアップ技術
└─【Linuxの基礎知識】仮想化・バックアップ系でよくあるトラブルと解決の入口
├─ 【Linuxの基礎知識】LVMとは?LVMを理解しよう!
├─ 【Linuxの基礎知識】仮想化とコンテナの基本を学ぶ!仕組みと違いを解説!
└─ 【Linuxの基礎知識】バックアップとリストア!スナップショット活用も紹介!
トラブル例(仮想化・バックアップ系)

仮想化やバックアップの仕組みは柔軟な環境構築やリスク対策に欠かせませんが、その一方で設定ミスや理解不足からトラブルが起こりやすい分野でもあります。
LVMの誤操作による領域不足、仮想マシンの起動不良、バックアップからのリストア失敗といった問題は業務継続に直結するため、原因を正しく切り分け、迅速に対応することが重要です。ここでは代表的な事象と解決の入口を整理します。
仮想化・バックアップ系でよく見られるトラブルを表形式にまとめています。該当する症状を見つけたら、原因の切り分けと解決記事へのリンクを活用してください。
| トラブル事象 | 原因の切り分け | 解決記事 |
|---|---|---|
| LVMの領域が拡張できない | 物理ボリューム不足/設定誤り | LVMとは?LVMを理解しよう! |
| 仮想マシンが起動しない | 仮想化設定ミス/リソース不足 | 仮想化とコンテナの基本を学ぶ!仕組みと違いを解説! |
| バックアップからリストアできない | スナップショット破損/設定不備 | バックアップとリストア!スナップショット活用も紹介! |
LVMとは?LVMを理解しよう!

Linux環境でストレージを効率よく管理する上で欠かせない仕組みが「LVM(Logical Volume Manager)」です。
LVMは従来のようにディスクを単純に区切る方法とは異なり、容量の拡張や縮小、スナップショットの取得など柔軟で高度な操作を実現します。
たとえば、業務システムの運用中に「ディスク容量が不足した」という状況に直面しても、LVMを利用していればサービスを停止することなく新しいストレージを追加したり、既存のボリュームを拡張できます。
さらに、バックアップの場面ではスナップショット機能を使うことで、システムを止めることなく瞬時に状態を保存することが可能です。
こうした特徴は、日常のサーバー管理やシステム運用を担うエンジニアにとって、安定したサービス提供とトラブル回避の両立に役立つ大きな武器となります。
LVMの領域が拡張できない場合の対策
LVMで領域を拡張できない場合、多くは物理ボリューム不足や設定ミスが原因です。
適切に切り分けて容量を確保する必要があります。
[原因の切り分け]
| 原因 | 確認方法 | 解決策 |
|---|---|---|
| 物理ボリューム不足 | pvdisplay で空き容量を確認 | pvcreate で新規ディスクを作成し、vgextend でボリュームグループへ追加 |
| ボリュームグループの空き不足 | vgdisplay で Free PE を確認 | vgextend で空き領域を追加 |
| 拡張コマンドの誤り | lvextend のオプション指定を確認 | 正しいオプションで lvextend を再実行 |
| ファイルシステム未拡張 | resize2fs や xfs_growfs の実行有無を確認 | lvextend 後に resize2fs / xfs_growfs を実行 |
| スナップショットによる制約 | lvs でスナップショットの存在を確認 | 不要なスナップショットを削除して空き領域を確保 |
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仮想化とコンテナの基本を学ぶ!仕組みと違いを解説!

仮想化とコンテナは、いずれもITインフラを効率化するために広く使われている技術です。仮想化は物理サーバー上で複数のOSを同時に稼働させられる点が特徴で、分離性が高くセキュリティや安定性を重視する場面に適しています。
一方のコンテナは、OSを共有しながらアプリケーションごとに独立した軽量な実行環境を作ることができるため、起動が速く、開発やテストのスピードを大幅に高められます。
用途に迷った場合は「システム全体を分離したいなら仮想化」「アプリ単位で手軽に環境を構築したいならコンテナ」と整理して覚えておくと判断しやすいでしょう。
仮想マシンが起動しない場合の対策
仮想マシンの起動不良は、CPUやメモリなどのリソース不足や仮想化の設定誤りが原因であることが多いです。
[原因の切り分け]
| 原因 | 確認方法 | 解決策 |
|---|---|---|
| リソース不足(CPU・メモリ) | top / free / vmstat で使用状況を確認 | ホスト側のCPU・メモリを増設するか、割り当てを見直す |
| ディスク容量不足 | df -h でホスト側の空き容量を確認 | ディスク容量を確保し、必要ならストレージを拡張する |
| 仮想化設定の誤り | virsh list --all や設定ファイルを確認 | 仮想化設定ファイルを確認・修正する |
| 仮想化支援機能が無効 | BIOS/UEFI の VT-x / AMD-V 設定を確認 | VT-x / AMD-V などの仮想化支援機能を有効化する |
| ゲストOSイメージの破損 | 仮想ディスクファイルの整合性やログを確認 | ゲストOSのディスクイメージを修復するか再作成する |
| ネットワーク設定の不備 | brctl show や ip a でブリッジ/インターフェース確認 | ブリッジやインターフェース設定を見直し、ネットワークを再構成する |
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バックアップとリストア!スナップショット活用も紹介!

バックアップとリストアは、Linuxシステムを安全に運用するための要となる仕組みです。データは最も重要な資産の一つであり、障害やトラブルが発生した際に適切な復旧手順がなければ、業務停止や大きな損失につながりかねません。
特にサーバー運用では「いつ」「どの方法で」バックアップを取得し、必要なときに迅速にリストアできる体制を整えておくことが重要です。
さらに、LVMなどの仕組みと組み合わせたスナップショット機能を活用すれば、サービスを止めずに瞬時にシステムの状態を保存でき、バックアップ効率を大きく高められます。
バックアップとリストアの戦略を適切に設計しておくことは、安定したシステム運用を支える強力な基盤となります。
バックアップからリストアできない場合の対策
バックアップがあるのに復旧できない場合は、スナップショットの破損や設定ミスが疑われます。保存状況とリストア手順を確認しましょう。
[原因の切り分け]
| 原因 | 確認方法 | 解決策 |
|---|---|---|
| スナップショット破損 | lsblk や dmesg でエラー状況を確認 | スナップショットの整合性を確認し、必要に応じて再作成する |
| バックアップ設定不備 | 設定ファイルやスクリプト内容を確認 | バックアップ設定ファイルやスクリプトを見直し、正しく反映させる |
| バックアップファイルの破損 | md5sum / sha256sum でハッシュ照合 | バックアップファイルのハッシュ値を照合し、破損していないことを確認する |
| リストア手順の誤り | 復旧コマンドやオプションを確認 | 復旧手順を事前にテストし、リストア手順を標準化する |
| バージョンや互換性の不一致 | バックアップツールと復旧環境のバージョン確認 | バックアップツールと復旧環境のバージョンを一致させる |
| 権限不足 | restore 実行ユーザーの権限や SELinux 設定を確認 | リストア実行ユーザーの権限や SELinux 設定を確認し、必要に応じて修正する |
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よくあるエラーと解決法

仮想化環境やバックアップ運用では、安定稼働を妨げるトラブルが少なくありません。
代表的なのは「VMが起動しない」「ディスクがすぐに一杯になる」「スナップショット作成やリストアが失敗する」といったケースです。
これらは設定ミスやリソース不足、あるいは保存先ストレージの不具合などが原因で発生します。また、バックアップ自体が壊れていたり、自動実行が機能していなかったりすることも珍しくありません。
こうしたエラーは発生すると業務に直結するため、迅速な切り分けと再発防止策が不可欠です。
ここでは仮想化・バックアップ系で頻発する典型的なエラーと、その解決法を一覧にまとめます。
| エラー内容 | 原因 | 解決法 |
|---|---|---|
| VMが起動しない | 仮想マシンの設定誤り/CPU・メモリ不足 | virsh list --allvirsh start vmname |
| 仮想ディスクがいっぱい | イメージファイルの容量不足 | qemu-img info /var/lib/libvirt/images/vm.qcow2qemu-img resize /var/lib/libvirt/images/vm.qcow2 +20G |
| スナップショットの作成に失敗 | ディスク容量不足/古いスナップショット競合 | virsh snapshot-list vmnamevirsh snapshot-create-as vmname snap1 |
| バックアップファイルが壊れている | コピー中断/保存先のI/Oエラー | tar -tvf backup.tarrsync -av /data /backup |
| リストアに失敗する | バージョン不整合/パス指定ミス | ls -l /backuptar -xvf backup.tar -C /restore |
| 自動バックアップが実行されない | cron/systemd設定誤り | crontab -lsystemctl status backup.service |
実践環境を整える
ここまで学んだ知識を実際に試すには、Linuxを動かす環境が必要です。手軽に始めるならVPSを利用するのがおすすめです。
→ VPS徹底比較!ConoHa・さくら・Xserverの選び方
VPSを利用してLinux環境を準備したら、実際の設定は下記の記事が参考になります。
→ VPSに開発環境を自動構築する方法|Apache+Tomcat+PostgreSQL





