皆さんはLinux環境で定期的な処理を自動化したいと考えたことはありませんか。
ログの整理、バックアップの取得、定期的な監視コマンドの実行など、手作業で行うと忘れたり、作業が偏ったりすることがあります。
そこで登場するのが「crontab」です。Linuxに標準搭載されているこの仕組みを使うと、指定した時刻や周期に合わせてコマンドやスクリプトを自動で実行できます。
とても便利な反面、設定を間違えるとタスクが動かない、重複して実行されてしまう、システム負荷が上がるといったトラブルにつながることも少なくありません。
「あれ、昨日仕掛けたはずのジョブが実行されていない」と慌てた経験はありませんか。
この記事ではcrontabの基本と、トラブルを回避するために押さえておきたいポイントを整理していきます。
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crontabとは?

Linuxで定期的に処理を自動化する場合に欠かせないのが「crontab」です。
日次のログ整理や週次のバックアップ、定期的な監視処理など、人手では忘れやすい作業を確実に実行するための仕組みとして広く利用されています。
システム管理やアプリケーション運用においても基本中の基本となる機能のひとつです。ここではcrontabの概要と役割について整理します。
crontabの基本概要
crontabは「cron table」の略称で、指定した日時や周期に合わせてコマンドやスクリプトを自動的に実行するための設定ファイルです。
cronデーモンが常駐してスケジュールを監視し、条件が一致した時点で対象の処理を実行します。
crontab -l
【出力例:】
# Example of job definition:
# .---------------- minute (0 - 59)
# | .------------- hour (0 - 23)
# | | .---------- day of month (1 - 31)
# | | | .------- month (1 - 12)
# | | | | .---- day of week (0 - 6) (Sunday=0)
# | | | | |
# * * * * * command to be executed
このようにcrontabファイルでは、分・時・日・月・曜日の5つの時間要素とコマンドを組み合わせることで、実行タイミングを柔軟に設定できます。
crontabで管理できる情報の種類
crontabで管理できる情報は、主に「ジョブの実行タイミング」と「実行するコマンドやスクリプト」です。分単位で細かく制御できるため、業務システムでは多様な用途に利用されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分 | 0〜59の範囲で指定可能 |
| 時 | 0〜23の範囲で指定可能 |
| 日 | 1〜31の範囲で指定可能 |
| 月 | 1〜12の範囲で指定可能 |
| 曜日 | 0〜6で指定、0は日曜日 |
| コマンド | 実行対象のコマンドやスクリプト |
これらを組み合わせることで、例えば「毎日深夜にバックアップを実行する」や「毎週月曜日の朝にログを整理する」といった定期処理を簡単に設定できます。
crontabを利用するメリット
crontabを利用する最大のメリットは、人手による作業を自動化できる点です。特にシステム管理においては、決まった処理を忘れずに実行することが安定運用に直結します。
# 毎日2時にバックアップスクリプトを実行
0 2 * * * /usr/local/bin/backup.sh
【出力例(バックアップスクリプトが echo を書いた場合):】
Starting backup process...
Backup finished successfully.
注意点として、cron自体はこのような出力を行いません。実際に出力されるのは、実行されたスクリプトやコマンドが標準出力やエラー出力に流した内容です。リダイレクトを設定しなければ、これらはユーザー宛てのメールに送られます。
crontabの導入手順
crontabは多くのLinuxディストリビューションに標準で含まれていますが、環境によってはパッケージを追加で導入する必要があります。
ここではRHEL系Linuxを前提に、crontabを利用できるようにするための手順と、基本的な利用方法を解説します。
パッケージのインストール方法
RHEL系Linuxでは「cronie」というパッケージにcronが含まれています。インストールされていない場合は以下のコマンドで導入できます。
sudo dnf install cronie -y
【出力例:】
メタデータの期限切れの確認: 0:10:12 時間前の 2025年09月08日 11時00分に実施しました。
依存関係が解決しました。
================================================================================
パッケージ Arch バージョン リポジトリ サイズ
================================================================================
インストール: cronie x86_64 1.6.1-2.el9 baseos 120 k
...
インストール済み: cronie-1.6.1-2.el9.x86_64
インストール後はcronサービスを起動し、自動起動を有効にします。
sudo systemctl enable --now crond
【出力例:】
Created symlink /etc/systemd/system/multi-user.target.wants/crond.service → /usr/lib/systemd/system/crond.service.
これでcronデーモンが常駐し、crontabを利用できる状態になります。
基本的な利用方法
インストール後は、各ユーザーが自分のcrontabを作成・編集して利用します。もっとも一般的なコマンドは以下です。
crontab -e
【出力例:】
# Edit this file to introduce tasks to be run by cron.
# Each task to run has to be defined through a single line...
# m h dom mon dow command
現在のcrontabの内容を確認する場合は以下を使用します。
crontab -l
【出力例:】
0 2 * * * /usr/local/bin/backup.sh
30 6 * * 1 /usr/local/bin/logrotate.sh
このように、`crontab -e` で設定を追加し、`crontab -l` で内容を確認するのが基本的な利用方法です。必要に応じて `crontab -r` で削除することも可能です。
crontabの基本的な使い方
crontabを正しく活用するためには、オプションの使い分けや基本的な表示方法を理解することが重要です。ここではよく利用されるオプションや、一覧表示、ユーザー指定、拡張オプションについて整理します。
crontabコマンドにはさまざまなオプションがありますが、日常的に利用するものは限られています。
以下の表に代表的なオプションをまとめます。
| オプション | 説明 |
|---|---|
| -e | ユーザーのcrontabを編集します |
| -l | 現在のcrontabの内容を表示します |
| -r | 現在のcrontabを削除します |
| -i | 削除時に確認を求めます |
| -u ユーザー名 | 指定したユーザーのcrontabを操作します(root権限が必要) |
| -T ファイル名 | 指定したファイルの構文をテストします |
| -s | SELinuxコンテキストを指定します |
| -x マスク値 | デバッグ出力を有効にします(数値はマスク値で実装依存) |
crontabの一覧表示
登録済みのジョブを確認するには `-l` オプションを使用します。これにより、現在のユーザーが設定しているジョブを一覧で表示できます。
crontab -l
【出力例:】
0 2 * * * /usr/local/bin/backup.sh
30 6 * * 1 /usr/local/bin/logrotate.sh
このように、分・時・日・月・曜日の指定とコマンドが並び、定期的に実行される内容を確認できます。
特定ユーザーのcrontab確認
管理者権限があれば、特定のユーザーが設定しているcrontabを参照できます。 -u オプションを用いることで、他のユーザーのジョブを確認できます。
sudo crontab -u testuser -l
【出力例:】
0 3 * * * /home/testuser/cleanup.sh
このように対象ユーザーを指定して確認することで、システム全体のジョブを把握しやすくなります。
拡張オプションを使った詳細表示
crontabには構文チェックやデバッグを行うためのオプションが用意されています。特にテスト用オプションは、運用前に設定内容を検証する際に役立ちます。
crontab -T mycronfile
【出力例:】
syntax OK
また、詳細なデバッグ情報を確認したい場合は -x オプションを利用できます。
crontab -x 2 -l
【出力例:】
[DEBUG] parsing crontab for user root
0 2 * * * /usr/local/bin/backup.sh
※ -x の数値はデバッグマスクを表し、実装やバージョンごとに出力内容が異なります。
crontabの応用と拡張
基本的なジョブスケジュールに加えて、crontabを活用することで長期的な監視やログの管理など、運用に直結する応用が可能です。
ここでは定期ジョブによる監視や、ログの保存方法、設定ファイルの格納場所について解説します。
定期ジョブによる長期監視
crontabを用いると、サーバーのリソース監視やサービス稼働確認を定期的に自動実行できます。例えば、CPU負荷やディスク使用量を定期的に取得し、ログに蓄積することで長期的な傾向分析が可能になります。
*/5 * * * * /usr/bin/sar -u 1 1 >> /var/log/cpu_usage.log 2>&1
【出力例(cpu_usage.logの一部):】
12:00:01 AM CPU %user %system %idle
12:05:01 AM all 12.5 4.2 83.3
このように短い間隔での収集を続けることで、障害発生時に過去のリソース状況を遡って分析できます。
ログ管理と保存期間の設定
定期的に実行するジョブは標準出力を伴うことが多いため、ログ管理を怠るとディスク容量を圧迫します。リダイレクトでログをまとめ、そのファイルをlogrotateで制御することで、安全に長期保存が可能です。
0 0 * * * /usr/local/bin/backup.sh >> /var/log/backup.log 2>&1
【出力例(backup.logの一部):】
Starting backup process...
Backup finished successfully.
さらに `/etc/logrotate.d/backup` のようなファイルを作成して、保存期間や世代数を管理します。
/var/log/backup.log {
weekly
rotate 4
compress
missingok
notifempty
}
この設定により、`/var/log/backup.log` は週ごとにローテーションされ、最新4世代分が保持されます。古いログは自動的に削除または圧縮されるため、ディスク容量を圧迫することなく安全にログを保存できます。
設定ファイルと保存場所
crontabにはユーザーごとの設定ファイルと、システム全体で管理する設定ファイルがあります。それぞれの用途を理解しておくことが重要です。
| 場所 | 内容 |
|---|---|
| /var/spool/cron/ユーザー名 | 各ユーザーが設定したcrontab内容が保存されます |
| /etc/crontab | システム全体に適用されるcrontabファイルです |
| /etc/cron.hourly/ | 1時間ごとに実行されるスクリプトを格納します |
| /etc/cron.daily/ | 1日ごとに実行されるスクリプトを格納します |
| /etc/cron.weekly/ | 1週間ごとに実行されるスクリプトを格納します |
| /etc/cron.monthly/ | 1か月ごとに実行されるスクリプトを格納します |
このようにユーザー単位とシステム単位の両方で設定が可能なため、用途に応じて適切な場所にジョブを配置することが重要です。
crontabの実践的な活用例
実際の運用では、crontabを単純な定期実行に留めず、障害時の調査や業務支援、他のツールとの連携に活用することが多くあります。
ここでは具体的な活用例を紹介します。
トラブルシュートの手順
ジョブが実行されていない場合、まずはcronサービスが稼働しているかを確認します。
systemctl status crond
【出力例:】
● crond.service - Command Scheduler
Loaded: loaded (/usr/lib/systemd/system/crond.service; enabled)
Active: active (running) since Mon 2025-09-08 11:32:14 JST; 1h 2min ago
次に、ジョブの実行結果はユーザー宛てメールやリダイレクト先のログに出力されるため、該当ファイルを確認します。
grep CRON /var/log/cron
【出力例:】
Sep 08 12:00:01 dev01 CROND[2456]: (root) CMD (/usr/local/bin/backup.sh)
このように順を追って確認することで、ジョブが正しく登録・実行されているかを切り分けることができます。
運用現場での具体的な利用シーン
運用現場では、定期的な処理を人手で行うと漏れや遅延が発生しやすいため、crontabが活用されています。例えば、システム監査のために毎週レポートを自動生成するケースがあります。
0 8 * * 1 /usr/local/bin/report.sh >> /var/log/report.log 2>&1
【出力例(report.logの一部):】
Report generated successfully at 2025-09-08 08:00
このように定期的な処理を自動化することで、担当者の負担を減らしつつ、業務の確実性を高められます。
他ツールとの組み合わせ活用
crontabは単体で使うだけでなく、他ツールと組み合わせることでより強力に活用できます。例えば監視ツールのアラートスクリプトをcronに組み込み、定期的にチェックして結果をSlackやメールに通知する仕組みです。
*/10 * * * * /usr/local/bin/check_service.sh | mail -s "Service Status" admin@example.com
【出力例(メール本文例):】
Service httpd is running
Service postgresql is running
このように他の監視・通知ツールと連携させることで、単純な定期実行から運用支援まで幅広く応用することができます。
crontab利用時の注意点
crontabは便利な反面、誤った使い方をするとシステムに負担を与えたり、不要なログでディスクを圧迫する可能性があります。
ここでは運用において注意すべきポイントを解説します。
ログ容量管理のポイント
ジョブの出力をファイルにリダイレクトすると、時間の経過とともにログが肥大化します。定期的にログをローテーションする設定を加えておかないと、ディスク容量を圧迫してシステム全体に影響を及ぼすことがあります。
0 0 * * * /usr/local/bin/backup.sh >> /var/log/backup.log 2>&1
【出力例(backup.logの一部):】
Starting backup process...
Backup finished successfully.
このようにリダイレクトで出力を残す場合は、logrotateの設定と組み合わせてログ容量を制御することが重要です。
性能やリソースへの影響
複数のジョブを同じ時間に集中させると、CPUやI/Oに過度な負荷がかかりシステム全体の性能低下を招きます。ジョブを分散させることでリソース使用を平準化できます。
0 2 * * * /usr/local/bin/db_backup.sh
5 2 * * * /usr/local/bin/log_cleanup.sh
【出力例(cronログの一部):】
Sep 08 02:00:01 dev01 CROND[2001]: (root) CMD (/usr/local/bin/db_backup.sh)
Sep 08 02:05:01 dev01 CROND[2025]: (root) CMD (/usr/local/bin/log_cleanup.sh)
このように実行時間をずらすことで、システム負荷の集中を避けられます。
運用上で陥りやすい落とし穴
crontabを使う上でよくある落とし穴のひとつが、環境変数の違いです。cronで実行されるジョブは、通常のログインシェルとは異なる環境変数で動作します。そのため、PATHが通っていないコマンドはフルパスで記述する必要があります。
0 6 * * * /usr/bin/python3 /home/testuser/scripts/report.py
【出力例(cronログの一部):】
Sep 08 06:00:01 dev01 CROND[3100]: (testuser) CMD (/usr/bin/python3 /home/testuser/scripts/report.py)
このように明示的にフルパスを指定しておけば、環境の違いによるジョブの失敗を防ぐことができます。
まとめ
crontabは、Linux環境で定期的な処理を自動化するために欠かせない仕組みです。基本的な編集方法やオプションを理解すれば、バックアップやログ整理、リソース監視といった運用業務を効率化できます。さらに、ログ管理やリソース負荷への配慮を行うことで、安定したシステム運用に直結します。
特に注意すべき点は、ログの肥大化防止や環境変数の違いへの対応です。これらを軽視すると、ジョブが正しく動作しなかったり、システム全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
記事を通じて解説した基本から応用、トラブルシュートや注意点を押さえることで、crontabを安全かつ効果的に活用できるようになります。運用の現場では、一度設定して終わりではなく、定期的に見直しと改善を行うことが長期的な安定につながります。


